シニアのための自分史講座

第三課 書く前の準備

①資料を集める

 自分の体験、経験は思いつくまま書ける内容もたくさんあると思います。まずは思いつくまま書いてもいいのですが、主題が決まったら関連する資料を目の前に準備してみてください。


 例えば戦争の体験を書こうと決めたとします。第二次世界大戦のことでしたら、当時の新聞がいいでしょう。図書館に行けば古い新聞が保存されています。


 世界の動き、経済、戦況、軍の発表、生活状況、物価の値段、流行していた歌や歌手、珍しい品品など忘れていた当時の様子がきっと鮮明になると思います。


 あるいは当時の教科書や雑誌、映画、学校の資料などを国会図書館や県立図書館、または民俗資料館、郷土資料館などで捜すことも楽しいものです。


 すでに故郷を離れている方は、この際、母校や村役場を訪ねて閲覧できれば、思いがけない貴重なものが発見できるかもしれません。


 ここで注意したいことは、あまりにも資料を捜すことに労力をかけすぎて、肝心の文章が進まない人もいることです。できれば第一稿くらいは書いた上で調査すると、書き落としていたり忘れていたことが膨らんで、加筆が充実すると思います。


 戦争中、千葉県で「花禁止令」が出され、農民は花を隠しながら育てたという史実を調べたとき、随筆家で作家の田宮虎彦氏の収集法をわたしは聞いたことがあります。


 千葉県で(たぶん全国でももっとも早かった)最初に販売用の切花栽培を始めた間宮七郎兵衛の家に残された資料収集に、田宮氏は一〇年近く通ったそうです。プロの仕事に少しでも近づきたいものです。

 

②年表を用意する

 自分史はどこから書いても、どの時代から書いてもいいと前章でいいました。

 ところが、自分が小学一年生のときは一九〇〇何年で大正か昭和の何年だったか、すぐに思い出せますか。あるいは親の年齢と生年月日、先生と自分たちの年齢のちがい。ある事件が起きたときは何年で何歳だったのか。


 年表には西暦と元号のはいったものに、(年代の記述は西暦が世界の共通表記ですが、元号の方が生活実感がある人も多いので、この場合はカッコで両方を併記します)社会の動きや当時の話題、人気だったお相撲さんや俳優などの記録されたものが、図書館に行けばすぐ見つかります。当時の物価の値段、給料の平均などが記録された年表もあります。図書館の司書さんに聞いてください。


 年表を用意すると便利ですし、忘れていたことを新たに思い出すこともあります。ここでも年表にとらわれすぎて筆が進まなくならないように。

 

収集物の整理

 資料や年表などを集めると自分では忘れていたことが記憶によみがえり、思いがけない文章を書けることがあります。できるだけ多くの資料を集めると、それだけ新しい事実に遭遇できます。


 では、たくさん集まったものをどうやって分類、整理するかです。ダンボールなどに入れておいても、いざというときに利用しにくいでしょう。


 作家だったわたしの先輩、青木慧氏(『青い鳥よどこへ行く』などの著者)の整理法を聞いたことがあります。いくつかの方法がありました。


(ア)年代順に分けておく。

(イ)事柄別に。家族、友人、同級生など人物別。

(ウ)新聞、雑誌、広報誌など引用したり参考にできる既刊の資料別。


 こうしたものをファイルや袋に分けておくと、書こうとするときにすぐ資料が出せるでしょう。

 

④情報を集めアンテナを高く

 新聞、テレビなどを何となく見ているだけでなく、自分の書いているテーマに関連していないか、参考にならないか、いつも注意していたいものです。思わぬことに出くわすこともあります。


 東日本大震災の報道を見ていて、関東大震災時の朝鮮人虐殺出版企画の参考にしたことがあります。


 熊本県で全国初のダム撤去が行なわれる報道をきっかけに、群馬県で撤回、再開で話題になった八ツ場ダムの記事を関連づけたことは、すでに書きました。


 福井県大飯原発の再稼動をエッセイに書こうと思っていたら、曹洞宗永平寺で講演した中嶌(なかじま)哲演(てつえん)僧侶の記事を読み、四〇年前に師を取材したことを思い出しました。内容が充実できたのは当然です。


 友人の話、近所の話題、町内会の情報など大小に関わらずアンテナを高く張り巡らせましょう。

 

⑤もう一度、書く前に

 書き方に特別な約束、法則があるわけではありません。
 一番、自分の書きたいこと、主張、伝えたいことを書けばいいのですが、普通の人は特別に訓練を受けたわけではないので、簡単にはいきません。次に挙げる方法は、いくつかの参考例と思ってください。


(ア)年代順、時系列に沿って書く。

 そのためには出生、入学、卒業、入社や転勤、結婚、子どもの誕生など人生の節目を区切り、年表を作っておくことです。


(イ)人生のなかでもっとも印象的な、感動的な、珍しい体験を思いつくまま書く。一つひとつの文章はつながらなくてもよいので、詳しく書くように努力します。 


(ウ)思い出すまま目次を立ててみる。

 戦争体験、戦友のこと、母父の思い出、同級生のこと、自分の失敗、恋人との出会い、仕事の悩みなど。できるだけ多く立て、そのなかの書きやすい順番に書いてみる。並べ替えは最後でよいのです。


(エ)テープレコーダー、カセットテープ、CDなどを用意し、人生のもっとも印象的な出来事を吹き込む。

 一人で語るのが難しい人は、誰かに同席してもらい、質問や相づちをしてもらいながら吹き込むと効果的です。対象となる人から話を聞き、テープに起こすことも本の内容を豊かにします。大げさにいえば取材です。


(オ)貴重な写真、学校の文集、会社の資料、手紙など手元にある物を整理し、この一つひとつについて書き進めます。

 当時の資料を見ることによって、過ごした時代のことが鮮明になってきます。この延長として図書館、役場、公民館、寺や観光協会、同窓会、戦友会、同好会などにある資料を集めることも役立ちます。


(カ)原稿用紙およびパソコン入力などに書き、記録する。

 メモ用紙だと字数、句読点などがわかりにくくなります。


 この他、自分で一番書きやすい方法を組み合わせてみてください。

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