宗教界の反原発

 仏教、キリスト教を問わず、福島原発事故を受けて宗教界に新しい動きが出ています。なかでも、わたしが驚いたのは曹洞宗が大本山・永平寺(福井県)で開いた脱原発シンポジウム。曹洞宗といえば14000余の末寺を持つ最大宗派、道元を開祖としています。

 この催しで講演したのは同県小浜市にある、真言宗明通寺の中嶌(なかしま)哲演住職。中嶌氏は「原発設置反対小浜市民の会」で40年にわたって活動してきた人。永平寺が偉いと思うのは、他宗派でも反原発の実績ある人なら認め講師に呼んだことです。

 じつはわたしが中嶌住職と会ったのは40年近く前でした。たまたま小浜市に取材で行った折、地元の人から原発に反対している住職がいると聞き、連絡すると急な申し入れなのに快く迎えてくれたのでした。

 明通寺には、たしか国宝・三重の塔があり静かな丘の中にありました。

「まだ、なかなか住民のみなさんに原発の恐ろしさを理解してもらえていないのですが」といいながら、月に何回か歩く托鉢から集めた寄付でニュースを発行しているとのことでした。

 全国有数の原発県で、40年前から今日の原発問題をコツコツ取り組んでおられたのですから、わたしには何か「仏がかった」人のように見えます。

 どこから見ても宗教人のようで、実際の行動も仏教が説く命の大切さを反原発にとらえている人でしたが、「ところで結婚は」との問いに、「宗教人は本来、結婚してはいけないのですが、わたしは未熟なので子どももいます」と。

 小社で出している『親鸞物語』をいま読むと、いかに親鸞が結婚し子を成したことに苦悩するかがわかりますが、結婚が許されないとは不思議な答だと当時は思ったものでした。

 原発を受け入れている福井県をはじめとする各地の自治体は、電力会社や国からもらえる膨大な資金に目がくらんだのでしょうか。しかし、福島原発事故を見るとき、どんなお金にも代えられない命やふるさとを失うことを知れば、中嶌住職の行動は宗教界だけに留まらない偉大なことだと思います。

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