あなたにとってのふるさと(故郷、古里)はどんなところで、どんな思い出ですか? 今度の大震災でこの言葉が「復活」したことに、特別な喜びを感じるわたしです。
熊本県の奥地、鹿児島県と宮崎県の県境に近いところに球磨郡はあります。「くまぐん」と読みますが、焼酎がおいしい、わたしのふるさとです。日本三大急流といわれた全長116kmの球磨川が流れ、人吉市から汽車に乗って上流にのぼると、まるで中国雲南省の水墨画を見るような風景です。
ところが、この球磨川はすでに半世紀前1950年代に3つのダムが造られ、急流、清流とは名ばかりの川になっていました。手で掴めるような鮎は激減し、激流で膝下でも渡れなかった流れは面影すらありません。
球磨川の最大支流、川辺川のダム計画が中止になり、最下流にある荒瀬ダムが、この春から撤去作業にかかるのです。ダムを壊し、撤去するのはアメリカやカナダでは始まっているそうですが、日本で初めての試みです。こうした方向は政府の考えとはまったく別で、長い住民運動の成果だということをわたしは知っています。
ダムの環境悪化は、球磨川と川辺川との合流点に立つと一目瞭然にわかります。ダムのない川辺川からは清い流れ、上流に市房ダムがある球磨川はいつも雨水が流れているような濁り。尺鮎として知られる両川の鮎は、値段も1000円ほど違います。河口の八代湾の漁業も激減、のり養殖業者は900軒から2軒に壊滅しました。
ところがダム建設中止とダム取り壊しの快挙です。どんな効果が出るか、全国の注目が集まっています。
一方、群馬県長野原町に予定されている八ツ場(やんば)ダムは、民主党の公約を破って白紙撤回から建設再開を決めました。
政府より力を見せた国土交通省の再開報告書は、まったくの詭弁です。70~80年に一度の洪水を想定し、8つの降雨モデルを計算したそうです。八ツ場ダムができれば下流域の洪水が防げるという計算。
ところが実際の同ダムが必要なモデルの雨水量は2例だけでした。こうなると7~80年の計算は、さらに4分の1に限られるので280~320年に一度の洪水を想定していることになります。数字のごまかしの典型でしょう。すでに半世紀近い計画当初から、首都圏などの水の需要は減りつづけていますが、水不足を相変わらず唱えているのも不思議です。
ふるさとを思い、考える人だけでなく、この国の方向をみんなで検討する時代ではないでしょうか。
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