「天はニブツを与えず」というが、この人にはいくつもの天才を与えている。
俳優にしてミュージシャン、写真もプロ並み、ドームでの8000人ビールのコマーシャルなど広告収入はうなぎ上り。顔の二枚目は当然にして、背も高い。「天は一物を与えない」わたしが悔しがって仕方ないが、世にこれほどの不平等を知らない。
さる日、NHKBSの再放送で「福山雅治 最後の楽園を行くー野生の王国アフリカへ」を見た。森へ森へはいって行く福山は、ゴリラやチンパンジーを追いかけながら自分の生きている都会をふりかえる。京大類人猿研究者の案内は、単なる自然志向の探索にとどまっていなかった。
「電気もない、だから原発もいらない。しかし、自然と生きる環境に恵まれている」アフリカの世界。まさか、わたしたちの生活を逆戻りにして、アフリカと同じようにしろという人はいまい。
洗濯機がなく手洗いでする、トースターが使えず炭で焼くー程度の復刻は可能かも知れないが、夏場に冷蔵庫がなかったら食べ物は腐る。風呂を沸かすのに薪を用意し、何時間で沸くのだろう。電車に乗れなければ大阪、名古屋に行くには東海道五十三次の徒歩か。
「電気料金値上げになるから原発も仕方ない」という人が意外と多い。産業が発展できず外国企業に制覇されてしまう、との脅しも聞こえる。
では、もう一度、ここで福島第一原発の事故後を考えてみたい。
避難民の自殺、病死が増えているばかりか、「湾内に放射能はとどまっている」と世界に公言した現場では、凍土による遮へい壁も成功していない。知人の冷凍専門家は、「どう考えても凍土で汚染水を止められると思えない」という。
除染土の捨て場をめぐって、あてのない放浪がつづいている。小泉元首相のいう「核燃料の使用済み処理の見通しがたたない」ことはもちろん、事故が起きた場合の避難計画はゼロに近い。
なのにだ。鹿児島県川内原発はGOサインが出たし、各電力会社は値上げラッシュを狙っている。原子力規制委員会は国の方向に沿った人の人選で信用できない。
もちろん反対の声も大きい。国会前の毎週金曜日デーには多彩な行動がくりひろげられているし、函館市の海を越えた原発阻止も勇気づけられる。
唯一、裁判で原発中止の判決を得た大飯原発で原告団になっている中嶌(なかしま)哲演氏については、わたしの「やさしい文章講座」DVDでも紹介した。すでに40年以上前から托鉢の寄付金でニュースを発行しつづけ、その時に取材してから今日まで継続されていた驚き。こうした反対の声はけして止まらない。
自然がいっぱいの生活か、便利だけど危険な原発か。単純に二者択一できないが、アフリカのチンパンジーにどちらがいいか聞いてみたい。
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