「やさしい文章教室」執筆の手引き

〈起承転結の妙〉

 ここまでは自分史の体験者、経験者の随想、小説を紹介してきました。


 では、もっと具体的に自分が作文や小説、自分史などを書くにはどうするか。わたしが勤める、東銀座出版社のHPに書いているものを転載します。


 少し実例を上げて文章の構成を考えてみましょう。


 以下のエッセイはわたしの作です。この短文を例に、文章をどう組み立てたらいいのか参考にしてください。起承転結は学校で習ったと思いますが、その効果を実践してみます。

 

 〈「雲雀とギャンブル」

 「ね、利口だろう。雲雀はけして巣の近くに舞い降りないんだよ。子どもに危害がないように、空から降りてくるときは遠くに着地して巣にもどるんだって……。ましてや人の子はもっとかわいいんだから、親は自分が食べなくても子どもを育てるんだよ」


 少年時代、貧しくてコッペパンしか食べられず、だだをこねていたときに母親から言われた思い出話。


 その雲雀を早朝の散歩で毎日、聴いている。点のように小さく天空に舞い、鳴き声は幕張の茜浜と習志野市営霊園にさえずっている。ピレィピリィ、ピィピィピーと聴こえる声はなんと叫んでいるかわからないが、澄んだ空気とともに1日の気合にもなる。


 ところが突然、この近くにボートピア(場外舟券売り場)建設の話が持ちあがった。新習志野駅前の、国際水泳場と千葉工業大学の横にである。


「年間3億円の還元が見込める」(実際は地方公営ギャンブルが赤字傾向)と市長は許可したが、工大学長の抗議声明、地元の学校PTAの反対、地元住民の裁判提訴にあっている。


 雲雀だって、360日開催されるギャンブラーに居たたまれないだろう。きっとピレィピリィ、ピィピィピー「うるさくて子育てできないよ」と叫ぶかもしれない。

 

 文章、とくに短いエッセイなどでは、起承転結の妙味がとてもはっきり出せます。意識して構想し、逆算して書くと上達すると思います。ここに載せた「雲雀とギャンブル」は、わたしのエッセイですが、これを参考に解説してみます。
 
 何が言いたかったのかが問題です。自宅近くにできる、ギャンブル場建設に反対したかったのが主張です。これが「結」です。けして(例外的に、わざと「結」から始めるときもありますが)、「結」から書き始めません。例外的に「結」から始めると、意外性で読者に驚きを与えます。しかし、わたしは悪まで例外にしか使いません。


 「起」は雲雀を思いつきました。ギャンブル場の近くを散歩すると、春先から天高く雲雀が毎朝、鳴いています。東京湾の海辺です。そこで、かつて誰かに聞いたことのある、雲雀の巣づくりを思い出し、母親のことばにしました。母親の思い出を「起」に、雲雀は「承」にしました。


 「起」のことばを「誰か」ではおもしろくないので、母親にしました。フィクションです。


 一番、難しいのは「転」かもしれません。ここで、どんでん返しをしなければ、文章の魅力、おもしろさは半減してしまいます。読者に予想もさせない「転」をいつも考えてください。


 そして、最後に主張したかった内容を「結」に結びます。短文でも「起」から始まって、「結」に到る工夫が計算されていませんか。試しに、起承転結を反転して読んでみてください。きっと、おもしろさが少なくなると思います。

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