「やさしい文章教室」執筆の手引き

〈実習編〉

 以下はわたしの実習編です。

 

 〈「花と戦争」    

 紫花だいこん(紫金草)を、今年も線路土手に見た方は多いだろう。
 南京大虐殺を見た日本軍医が、その悲惨さに心を痛め、紫花だいこんの種を中国から持ち帰って、山手線などの土手に蒔いたのが、日本全国に広がった由来である。


 この話は1983年に遡る。わたしは、作曲家の大西進氏(「青い空は」作曲者)と正月明けに、南房総に出かけていた。第2次世界大戦中、食料増産のため花禁止令が出されていっさいの花栽培ができなかった、という史実を音楽構成にするためだった。


 こうして、わたしたちが書いた「花とふるさと」(土田明子ほか詩)には、釜に煮物と見せかけて種を隠したり、山奥に水仙を隠し植えた、花を絶滅させない農民の知恵が綴られている。当時、花禁止令に違反した者は、非国民として村八分にされた。


 田宮虎彦著「花」のほか音楽構成、演劇、映画、童話などに再現され、和田町の中学校では卒業記念に今も発表されつづけている。 大正時代、最初の花栽培になぜエンドウ豆を植えたのかや、花と朝鮮海女のつながり、梨と花禁止令など話は尽きない。


 紫花だいこんをテーマにした「紫金草物語」(大西進曲、大門高子詩)は、房総で取材、創作した「花とふるさと」の中国版である。


 「家庭で親子が語り合える戦争反対」をめざしたこの運動は、さだまさし、井上ひさし氏らの協力で広がり、たびたび千葉県で上演された。戦争に反対すると村八分された時代、真正面からそれに抗した人びとを、わたしたちは知っている。

 

 自分史を書く上で、上手に書こうとしたり、うまくまとめようとしないで、考えていることや思っていることを、素直に綴ることと強調しました。あまり技術によりかかると本音が見えなくなるからです。


 しかし、起承転結や書き出しを念頭におくことも大切と言いました。この程度の技術を知っているのと、そうでないのとの差は明らかです。 

 

〈「釈迦と柔道」                
 北京オリンピックの柔道を見ていて、日本男子の成績にがっかりしたのは、けして関係者や愛好家だけではなかったろう。なにが原因だったのか。


 小学生3年のときから柔道を「修業」していたから、オリンピック選手の練習やプレッシャーはある程度、理解できる。かの石井慧選手のように負けない柔道をめざすべきなのか、お家芸のようにきれいな1本勝ちをめざすべきなのか。


 新年の参賀に行った寺で小さな冊子をもらってきた。そこに、ある宗教学者が「釈迦の教え」を書いている。


 修業はどこでもできる、電車の中でも、仕事中でも可能なのだそうだ。宗教の最終目的は、「死に対する恐怖からの救い」だと、わたしは思うが、この恐怖を修業によって薄められる、という。


 電車や仕事でも修業ができるとは本当か。学者いわく「集中することだ」と。死に向かって自分を見つめ、恐怖に向かって集中すれば、心は少しでも穏やかになるらしい。この、集中する心こそ大切だと強調する。


 では、テレビゲームもある種の集中ではないか、と問うた人がいた。これが意外や意外に、けして集中ではなく、逆の分散や散漫だと学者氏は言うからむずかしい。


 「テレビゲームは一見、集中しているように見えるが、あれは外部から与えられた刺激に目や指を反応させているだけで、けして心、気持ちを集中させているわけではない」と。


 さらに禅問答がつづく。
 「では、われわれ凡人が日常的に修行=集中できることはどんなことか」
 「ひとつの例だが、数学を解くことだ。数式を考えるときは、気持ちを集中しなければ解けない。他のことを考えていてはだめだ。雑談していたり、お祭りの中でけして数式は解けない」


 要約し解説してもらっても、解答のようでもあり、不明でもあるような禅問答。
 だが、たしかに北京オリンピック日本男子の柔道は、集中力に欠けていたのではないか。けして修行・練習に手抜きがあったと思えないから。


 ヨーロッパ式とかレスリングスタイルといわれ、投げではなく、タックル技や組み手の争いで試合にならない。多くの視聴者から「今の柔道はおもしろくない」と言われる一方、国際規定で認められたルールでもある。


 釈迦が柔道を知っていたらどうしたのだろう。修行=集中をどのように教えてくれたのだろうか。

 

 ここまで、「やさしい文章の書き方」「誰でも書ける作文」「世界でたった1人しか書けない自分史」のような設定で、実践を紹介しつつ解説してきました。


 当講座「やさしい文章教室」で、このつづきを解説していきたいと思っています。


 文学や文章に定式はないのですが、それでも、読者に読みやすいものをめざすためには、基本を知っておくことが大切でしょう。

資料を請求する
戻る
東銀座出版社 電話03-6256-8918

〒171-0014

東京都豊島区池袋3-51-5-B101

シニアのための自分史講座

人生の記録を自分史に残しませんか? シニア向け講座を開講中。

7月15日、TBS『あさチャン!』「やさしい文章教室」が特集

されました。